相続の基礎知識

平成27年1月より施行された相続税の改正により、一般の方でも相続税の対象になった事例が出てきております。また、財産の少ない多いに関わらずもめ事となるケースも散見しています。やはり相続そのものを理解することと、相続税に対す対策も他人事では無くなってきています。本章では当事務所でサポートさせていただいてる代表的な部分をご紹介いたします。

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改 正 前
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現 在

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課税対象

基礎控除額 5,000万円+
1,000万円×法定相続人の数

課税対象

基礎控除額 3,000万円+
600万円×法定相続人の数

*ポイント*

・基礎控除額の減額(4割減) ・課税税率のアップ(最大税率55%)

相続手続き

一般に相続が発生した場合、相続手続きを行います。大まかに表記すると以下のようになってきます。かなり多岐に渡り手続きをしなくてはいけなくなってきます。大抵の方が直ぐに終わるだろうと思っていますが、期日ギリギリになることも、しばしば起こります。相続される方の状況により変わりますが、最初から最後まで完了させることは、非常に煩雑な手続きから申請に至るまで、時間を要し負担となるのが現実です!

[相続手続きの流れ]

相続人の死亡
  • 死亡届を7日以内に市区町村に提出する
  • 葬儀費用の領収書の整理・保管
  • 遺言書の有無の確認(公正証書以外の遺言があれば家庭裁判所で検認手続き)
  • 法定相続人の確定(戸籍により確認)
  • 被相続人の財産と債務の確認
3ヵ月以内
  • 相続の放棄、限定承認(プラスの財産の範囲内で負債を承継すること)の申述を家庭裁判所へ
4ヵ月以内
  • 財産と債務の評価
  • 相続税額の概算
  • 財産と債務の分割協議案
  • 相続税の納税資金の考慮
  • 被相続人の財産と債務の確認
  • 分割協議の確定
  • 不動産の相続登記と預金の名義変更
  • 分割協議書の作成(遺言がある場合には不要)
  • 相続税の申告書の作成
10ヵ月以内
  • 相続税の申告と納税期限(延納・物納の申請期限)
*ポイント*
  • 各種届け提出
  • 必要書類の準備(戸籍関係・住民票等)
  • 各種解約及び名義変更等(預貯金解約・保険解約・不動産名義変更等)
  • 遺産の分割協議
  • 相続税の申告

遺産分割協議書

相続が発生した際に遺言等が無く、相続人が複数いる場合相続分に応じて、相続人に遺産を分配する必要があります。具体的に、誰にどう分配するかの話し合いを相続人全員でする必要がでてきます。この話し合いで決まった事が『遺産分割協議書』と言います。(*遺言書があった場合はそちらが優先となり、分割協議は必要有りません)

[遺産分割協議書の作成について]

相続人の確定

遺産分割協議書は、全ての相続人が参加し話し合いを行わなければなりません、なぜなら相続人が一人でも欠いてしまうと、その遺産分割協議書は無効になってしまうのです。

特別代理人の選任

相続人の中に未成年がいる場合、未成年者本人とその親権者の利害の対立を避ける為、特別代理人の選任をする必要があります。(親族より適切な人選をし、家庭裁判所に申し立てが必要)

遺産分割の種類

遺産の分割には様々なものがあります、『不動産』『現預金』『有価証券等』『事業資産』等各種に分かれます。特に分割しにくい財産の場合は相続人間で、公平に不満なく分けることが大切です。

現物分割:個々の財産をそのまま相続人に現物で分配します
共有分割:公平な分配ができます
換価分割:そのままでは分割しにくい財産等を売却現金化し相続人に分配

父(亡):土地建物▷妻 預貯金▷長女 事業資産▷長男

代償分割:財産を一部の相続人が取得する代わりに、他の相続人に金銭を払う

父(亡):土地・建物▷妻と長男で共有

父(亡):土地・建物▷売却(現金化)▷妻・長男・次男で分配

父(亡):土地・建物(5000万)▷長男▷次男へ長男より2500万現金

*ポイント*
  • 相続人全員で行う必要があります。(一部を除外して行った協議は無効になります)
  • 法定相続分の割合にかかわらず、自由に行うことが可能です。(協議の中で合意があれば有効)
  • 協議の内容は遺産分割協議書の書面に記載します。(不動産の相続登記などの名義変更や相続税申告書にも使います)
  • 協議そのものが行えなかった場合、家庭裁判所に対して、分割の調停・審判を請求できます。

遺言書

遺言書は、今や珍しいものでは無くなりました。遺言書があれば不要な争いが無くなる上に、ご自身の思いをご遺族に残すこともできます。法定相続分を考慮した上でどうしても、『こうしたい・ああしたい』と言った思い入れが有る場合は、特に遺言書は重要になります、遺言書が無いばかりに遺産分割を巡り、争いが起きる事も。また、相続人にへの負担・スムーズな相続を考えた場合、『遺言書』は非常に重要な手法と言えます。

[遺言書が必要と思われるケース]

  • 一般的に遺言書を書く必要のある場合
  • 遺産を公益事業などに寄付したい
  • 特定の子供により財産を多く与えたい
  • 先妻の子供と後妻の子がいる場合
  • 相続人が未成年者である
  • 自分の事業の後継者を指定したい
  • 血族相続人が子供以外の場合
  • 財産を与えたくない相続人がいる
  • 内縁の妻や未認知の子供がいる

遺言書の種類

公正証書遺言:公証人が作成(遺言が公証役場にも保管される)

自筆証書遺言:遺言者が自分で作成(自分で保管)

秘密証書遺言:遺言者が自分で作成し、封をして公証人に提出(自分で保管)

遺言書の作成手順

  • 自分の相続財産を把握する(全ての財産調査が必要)
  • 法定相続人を確保する
  • 財産の分割方法を決める(相続税の計算と納税方法も調べる必要有)
  • 遺言書を作成する
  • 証人を2人決める(証人は信頼できる人:弁護士・税理士・親類等)
  • 遺言書の内容確認
  • 証人と公証人役場へ行き、公証人に作成してもらう

遺言書が無いばかりに、『相続』が『争族』になってしまったというのは近年よくある事例です!法定相続人達が『骨肉の争い』をしてしまい、遺言書が無いばかりに相続手続きが一向に進まず、遺産の分割を巡り本当に争ってしまうケースも散見しています。円滑な相続手続きをする上でも、遺言書は非常に有効な手段だと言えます。

*ポイント*
  • 遺言書の作成目的の明確化(事業承継・ラブル防止・身辺整理・家族への思い)
  • 安全性や確実性の観点から公正証書遺言がお勧め
  • 法律や相続税の計算、納税方法等の観点から専門家のアドバイスは必要

相続対策

一般的に、相続対策として、以下の項目で生前に準備しておくものや、生前に対策しておき死後に効力を発揮するもの等がございます。ここでは大きく分けて【 贈与 】【 不動産 】【 保険 】を活用した、相続対策をご紹介します。

贈与(生前贈与)110万円の基礎控除を利用する

例)2人に5年間110万ずつ毎年贈与した場合⇒2人×10年間×110万円=2,200万円

合計で2,200万円渡しているのに、贈与税はゼロ!さらに相続財産を減らすこともできるので、メリットが非常に高い。

*ただ、この方法はしっかりと行わないと税務署から贈与を否認される場合があり、あえて120万円ずつ贈与を行い、税率10%で1万円だけ払い申告と納税をおこなう。この方法で税務署対策もバッチリです。

相続時精算課税制度

贈与税と相続税を一体化させた課税方式になり、将来において相続関係にある親から子へ生前贈与を行い易くし、相続時に精算することを前提に、2,500万円までの贈与なら、贈与税が非課税扱いになります。

  • 1. 2,500万円までは贈与税を免除(2,500万を超える部分は一律20%の贈与税)*住宅資金であれば3,500万円まで非課税
  • 2. 満65歳以上の親から満20際以上の子供への贈与に限られます。
  • 3. 支払った贈与税は相続の際の相続税から控除ができる。
  • 4. 1の金額以内であれば何回贈与を受けても非課税になる。

*贈与税の額が非課税枠を超えた場合に一律で20%の税率で課税され、その贈与税は相続の際に贈与財産を相続財産に加算して計算された相続税額から控除されます。(贈与財産は贈与時の価額とします)また、贈与税額が相続税額を上回る場合には還付されます。

不動産(小規模宅地の特例等)

遺産の中に、一定の要件を満たす被相続人等の住宅や事業に使われていた宅地等がある場合、その宅地等の評価額の一定割合を減額する特例があります。これを、『小規模宅地等についての相続税課税価格計算の特例』といいます。特例の適用を受けられるのは、個人が相続や遺贈により取得した宅地等で、次のすべての用件に該当するものです。

  • 1. 相続開始直前に、被相続人または被相続人と生計を共にしていた被相続人の親族の事業用、もしくは居住の用に供されていた宅地等であることこの「事業」には、事業と称するに至らない不動産の貸付や、これに類する行為(準事業)も含まれます。
  • 2. 建物または、構築物の敷地の用に供されていたものであること
  • 3. 棚卸資産に該当しないものであること
  • 4. 一定の限度面積までの部分として、各相続人等の合意の下に選択したものであること
  • 5. 相続税の申告期限までに分割されていること

上記の条件を満たしている場合最大80%まで減額して評価することができる

*特例の適用を受けられる宅地等には、区分に応じた限度面積が設けられています。 また、宅地等の利用状況、区分に応じて減額される割合も異なります。なお、この特例の適用を受けるには、相続税の申告書に、この特例を受ける旨、その他所定の事項を記載して、遺産分割協議書の写しや相続人の住民票・戸籍の附票などの必要書類を添付する必要があります。

保 険

相続において相続の基礎控除(税金の優遇)があるように、生命保険にも基礎控除が別に存在します。この知識を知っているかどうかで優遇される税金が変わってきますので、相続対策によく使われます。

生命保険の非課税枠を利用

ご本人が亡くなった後に、ご家族が生命保険金を受け取った場合、相続税の計算時に法定相続人1人当たり500万円までが非課税となります。

例)夫(亡) 妻・子供A・子供B(妻が死亡保険金3,000万円を受け取る)法定相続人(妻・子供A・子供B)3人×500万=1.500万(非課税)

一時所得にする方法

相続財産が多く高額な場合、かかってくる相続税率も高くなってきます。その場合には……長男を契約者(保険料負担者)と受取人にし、被相続人を被保険者としておくと、万が一の場合に長男に支払われる死亡保険金は相続税の対象になりません。(一時所得となります)

この時、長男がその保険料を負担することが難しい場合、 被相続人が贈与することもできます。これを保険料贈与といい、例えば毎年120万円ずつ贈与しても贈与税額は1万円で済みます。

*ポイント*
  • 資産状況により様々な手法があるので専門家への相談が早道
  • 贈与や土地活用、保険活用も生前での準備が大切
  • 税法の改正等による対策変化は専門家のアドバイスを!

*上記の各ポイントは、ほんの一部となります。これをご自身で処理した場合は、相当のお時間と労力を要します、また専門的な部分も多分にございますので、専門家にアドバイスをもらうのが得策かと思います。当事務所では相続全般の対応が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。